FoodTech

 GFIレポート(発酵技術)について

5月 12, 2024

 GFIレポート(発酵技術)について

※同様の内容について、Spotifyにおいても発信しております(日本語のみ)。

今回は、Good Food Institute、略してGFIが発表した、2023年の発酵技術に関するレポートについて、レポートの中から私が気になった点を中心に、紹介をさせていただきます。

まず、GFIとは、代替タンパク質に関する非営利シンクタンクおよび組織の国際ネットワークとなります。

さて、発酵技術分野における世界的な総投資額は、2022年に比べ2023年は減少しているとのこと、同じくGFIによる培養肉・培養魚肉に関するレポートによる、培養肉・培養魚肉に対する2022年から2023年の投資額の大幅な減少額に比べると、減少割合は少ないものの、数字だけみると、そのような結果になっているとのことです。

GFIデータベースに登録されている企業の技術的な割合をみると、ほぼ半々で、バイオマスと精密発酵に注力がされているとのことです。また、2023年に、発酵技術をメインに活動していると発表している企業の数は、158にまでなったとのことです。

地域別に発酵技術に焦点をおいている企業数をみていくと、アメリカが一番多く46企業、続いてイスラエルの13、イギリスとドイツの10となっており、カナダとアメリカで50企業、ヨーロッパ全体で61企業、アジアで27企業が活動をしているとのことです。

2023年には新たな製造施設等をオープンさせた企業もいくつもあり、また、ネスレ、クラフト・ハインツといった多国籍企業も、発酵技術分野に取り組み始めています。

また、製品開発、上市に向けた、企業間同士の提携も活発になってきているとのことです。

上市されている製品のうち、個人的な好みとなるのですが、乳製品に注目をすると、Bel Brabds USAは、Nurishh Incredible Dairy Animal Free Cream Cheese Spread Alternativeをパーフェクトデイと、そしてThe Laughing Cow Plant-Basedをホールフーズなどの米国内の店舗で販売を開始したとのことです。また、Nature’s Fyndは、企業の有するFy proteinというタンパク質を用いた菌類ベースのヨーグルトを、ホールフーズで2023年12月に販売開始をしています。

消費者の目線から、発酵技術を用いた食品がどのようにとらえられているかというと、この言葉が健康に良いといったポジテイブなイメージでとらえられているのはフランスとスペインで、一方比較的ネガテイブに捉えられているのはアメリカやイギリスとのことでした。消費者からすると、精密発酵により食品が製造されるプロセスについて、企業側にもっとわかりやすく、かつ詳細を開示してほしいとの要望があるとのことです。やはり消費者からすると、例えば精密発酵を用いて作られた乳製品を買おうと思う動機は、その製品が安全であるかどうか、次に健康的であるかどうかにかかっているとのことでした。

他にも投資の観点など、このレポートは内容が盛りだくさんなのですが、特許の観点からの記載があったので、次にそれについて簡単にまとめさせていただきます。

まず、各企業の活発的な特許取得により科学的進歩の公開が可能となり、特許活動は、この分野における産官学での世界的な発酵技術のバリューチェーンの成熟を表しているとのことです。

また、2011年から2023年の間に、GFIのデータベースに登録されているバイオマスと精密発酵に注力している企業の特許出願数は急激に増え、2019年には366だったものが、2023年には1591にもなっているとのことです。

特許出願を地域別にみると、やはりアメリカが一番多く、次にヨーロッパ、オーストラリア、カナダ、韓国、そしてイスラエルと続いています。

過去3年における企業別の特許出願件数を多い順にみると、The Every Company, Solar Foods, Nature’s Fynd, Perfect Day, Orbion, Mycotehnologyという順になっているとのことです。

精密発酵技術は、乳製品の場合、乳製品における味と食感を再現するために選ばれることが多く、また風味や栄養を改善するために用いられることが多いとのこと、2023年にパ―フェクトデイは、組み換えβラクトグロブリンタンパクに関する特許を取得したとのことです。また、特許のうちの一つは、この企業のスイートプロテイン、脂肪、他の栄養素を含む、ホエイタンパクを含む食品配合に関するものでもあるとのことです。

他にもこのレポートにおいて、発酵技術を用いた食品、栄養素に関する各国、地域の規制の状況などの紹介もされていますが、今回規制についてのお話は、省略をさせていただければと思います。ご興味のある方は、是非一度、リンク先にある本レポートに目を通していただければと思います。

State of the Industry Report: Fermentation