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弁理士として特許分析から企業の動向を読み解く意義について

7月 20, 2024

弁理士として特許分析から企業の動向を読み解く意義について

※同様の内容について、Spotifyにおいても発信しております(日本語のみ)

今回は、弁理士として特許分析から企業の動向を読み解く意義について、私の独断と偏見を交えながら、Spotifyにて、お話をさせていただきました。

よく、企業分析、経営コンサルといった場面で、特許から読み解く企業動向といった記事などを見ることがあります。

特許というのは、技術情報を公開する代償として、一定の期間、独占排他権を有することができるという仕組みなので、特許の内容を見れば、その企業がどのような技術をコアとしているのか、また、今後どのようなビジネス展開を検討しているのかといった情報が分かるということで、特許もしくは特許に限らず、知財情報というのは、企業分析の一ツールとして大変有用なものであるため、色んな場面で、活用がされています。

さて、弁理士というのは、ここでは特許専門の、という前提でお話をさせていただきますが、その仕事柄、常日頃、特許明細書を読んだり書いたりすることが仕事のメインとなっているため、明細書を読むときに、まずどのあたりから読み始め、どこにポイントが書いてあるか、といったことは、それなりに経験を積んだ弁理士であれば、直感的にわかるかと思います。

なお、これは弁理士に限ったことではなく、研究開発に携わっている研究者の方、アカデミアの方で、常日頃競合の特許に目を通されている方や、知財コンサルや経営コンサルのお仕事を通して明細書を日々読まれている方にも、通じることかもしれません。

ここからは、本題の、弁理士として特許分析から企業の動向を読み解く際に、どういったポイントから弁理士は明細書を読み、特許分析を行っているのか、私の独断と偏見とはなりますが、簡単に紹介をしてみたいと思います。

例えば、訴訟に関わったことのある弁理士の方や、日頃から判例をよく読む弁理士の方であれば、権利化後の特許公報を見た場合に、そのクレームがもし係争事件に発展した場合、どういった観点から訂正をされるか、はたまた最悪の場合、権利としてつぶされてしまうか、といったことを検討しながら、特許を読み解く傾向があるかと思います。

次に、外国案件に精通されている弁理士の方であれば、国によって一歩進んだ分析や、先読みを含んだ読み方をされるかと思います。

例えば、米国であればフアミリー出願の確認、すなわち継続出願がされているか否かを確認し、1つの特許出願からチェーンのように継続的に出願がされている場合に、どのような形で多方面から権利化がされているといったことを、読み解いていくかもしれません。

係争事件なども、主要国においてはそのやりとりが公開されているので、例えば攻撃を受けている出願や特許であれば、攻撃主体は誰なのか、また、どのような観点から攻撃をされているかについても、読み解くことになるでしょう。

また、係争関係や外国出願の精通の有無にかかわらず、弁理士であれば、出願段階でのクレームをみて、権利化される場合のおおよその落としどころを推測する、ということは、癖のように行うのではないかと思います。

すなわち、弁理士として特許分析から企業の動向を読み解く際には、技術的な内容という観点のみならず、法的な観点から特許を読み込むこととなり、その結果、企業の動向について、技術的な側面からの今後の動向の予測とともに、競合他社の動向、動き等についても、網羅的に分析が進むという傾向があると考えられます。

なお、たまに弁理士や弁護士といった法的な専門家ではない方の特許分析の記事などを見ていると、法的に誤った解釈や、参考にされている情報が出願段階のものなのか、それとも権利化後のものなのかを意識せずに内容について言及をされているものがあり、少なくとも特許に関する文書というものは、法的な文書であり、法的な観点から誤った情報を伝えていないかの意識は、常日頃されるのが良いのではないかと考えます。